steorfan/sterben/starve to death

まだ本家公開前だが、第10回ICANOF企画展「飢餓の國・飢餓村・字(あざ)飢餓の木展=kiga展」は、2010年9月17日(金)からスタートする。

大鴉:豊島弘尚

今回の招待作家は吉増剛造豊島弘尚で、初日夜には吉増剛造のトークが予定されている。詳細は本家の発表を待ちたい。

然しながら「飢餓」とくれば、やはりこれだろう。
昨年末のモレキュラー公演「マウスト」での「鵜飼哲x豊島重之」アフタートークにおいて、黒田喜夫の名前が突如として甦生させられたことは記憶に新しい。

黒田喜夫「死にいたる飢餓」(国文社)

黒田喜夫はこの「死にいたる飢餓」の中で、

言葉を吐くとき、ひとびとの口は深い穴。ひとびとが言葉を吐くのではなく、まるで穴そのものが吐くようだ。

つまり「あんにや」と呼ばれる男は飢えた男であり、ただの飢えた男ではなく、彼の飢えは病いであり宿命であり、考えられる彼の生涯に入り切らないほどの飢餓をもつものだというのだ。おそらく彼に向って吐かれる言葉よりも彼自身、深く暗い穴から生れてきたといわれるほかはない者なのである。そして深い穴は、ひとびとの口を通り肉体を通り、ひとびとを超えてはるかに下の方まで通じているに違いないということなのである。

深く暗い穴。われわれ自身を通じわれわれ自身を超える穴。そしておそらく穴の底には、中世、近世における農奴、質者奉公人や放下人の姿があんにや達の祖として、まだうごめいているのが見えるかも知れない。

と書いている。
まさに「マウスト」「BBB」を髣髴させられるではないか。

ましてや「死にいたる」に至っては、沖縄の「デコイ」月島の「イル/イル」本郷の「マウスト」早稲田の「バレエ・ビオメハニカ」で上演テクストとして用いられた「シャティーラの四時間」(ジャン・ジュネ)とともに、今までのモレキュラーの「戦歴」を想起せずにはいられない。

ジュネ「シャティーラの四時間」鵜飼哲・梅木達郎=訳(インスクリプト)

9月までに読むべきこと、考えるべきことは山積している。

この論文(日本語=32ページ目からの「記憶という問題、あるいは社会の未決性について―沖縄戦後史から考える」)によると、妄想子は未読ながら、黒田の「詩と反詩」には「みずからの飢えを絶対化し党、指導者と革命の一切の手段を絶対化」すると書かれているらしい。

黒田に於ける「飢え/飢餓の絶対化」である。
こと絶対化とくれば、豊島重之においては、或いはモレキュラーにおいては、その「絶対性」に対峙し/され得る或る「戦意」とアクチュアリティを亀裂の奥底で炸裂させる闘いに挑み続けてきたのではなかったか。

亀裂といえば、現代詩手帖1977年2月号「増頁特集=黒田喜夫 飢餓と情念のゆくえ」に収録されている座談会「始源と向き合う方位 反詩と拮抗する運動領域から」(堀川正美/吉増剛造/北川透/岩田宏)の中で、若き吉増剛造が、

もっとどうしようもない亀裂というか、暗黒のようなものが出てくるんですよね

とか

ちょっと血の気のひくようないろんな裂け目とぶつかりまして

といった発言をしていることが脳裏を過る。

現代詩手帖1977年2月号「増頁特集=黒田喜夫 飢餓と情念のゆくえ」(思潮社)所収の座談会「始源と向き合う方位 反詩と拮抗する運動領域から」

さらに吉増は、黒田の詩自体が持っている「時間が腐りつつもどっていくような」特徴や、「もうどうしようもない、「無」とも「虚無」とも言えない宙吊りの状態に衝突している」と云える「穴」の問題について触れ、「その怖しい始原の穴をうめるような方位へ向いている」と思われる作品においてすらも、黒田自身が「無音帯のさけめ」と呼んでいる「さらに細かくなった穴のきらめきが随処に見える」ことを指摘している。

う〜む。
これは妄想どころの騒ぎではない(=妄想子の出番はない)。

現代社会は「飢えに飢えている」などと実/真しやかに書かれたテクストが氾濫する中、その飢えとは何か、その飢えにおける絶対性(のようなもの)とは何かをまずアクチュアルに問うこと無しに、この問題を軽々しく扱うことはできまい。

自らの身体の穴=胸郭に、「左肺合成樹脂充填術」(胸膜外合成樹脂球充填術或いは肋膜外剥離合成樹脂球充填術のことか)なる(今日の感覚からすれば)乱暴な手術を20代に受けた黒田における「穴」「亀裂」「裂け目」の奥底に蠢くもの、それはもしかしたら「騒めく/五月蠅なす死者」かも知れない。と思うと、そこに接線を引く前にそこに刻まれたものに慄然とさせられる。言葉が生起する〈どこにもない場所〉を目指したアガンベン「言葉と死」や遅延・死・喪を巡るデリダ「留まれ、アテネ」のテクストも去来/襲来してくる。これはたまらんので、妄想子もこの辺で引き籠ることにする。

いずれにせよ、マニアは、この9月17日〜19日、八戸へ行かねばならない。

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s


%d bloggers like this: