南京虫

モレキュラーシアターイリュミオール/イリュシオール』では、フセヴォロド・メイエルホリドの年譜の朗読が行われるが、それは

「1929年1月、『南京虫』の音楽をプロコフィエフに依頼するが断られ、結局音楽はショスタコーヴィチが担当」

ではじまる。これは、スターリンがトロツキーを国外追放し独裁体制を完成した時期にあたる。

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マヤコフスキー『南京虫』は彼の最晩年の戯曲で、シルヴェスター・スタローン主演のハリウッド映画「デモリションマン」の粗筋を彷彿とさせる「不条理」劇だったようだ。ちなみに「デモリションマン」には、「ベルナルド・マルクス=Claude Bernard + Karl Marx」「レーニナ・クラウン=Vladimir Lenin」「ポーリー・トロツキー=Leon Trotsky」といった(ソースを示唆する)登場人物が頻出するオルダス・レナード・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界 Brave New World (1932)』の影響が指摘されている。さらに『すばらしい新世界』は、ハクスリーの親友J.B.S.ホールデンの「ダイダロス、あるいは科学と未来 Daedalus; or, Science and the Future (1923)」との関連性(無断借用とも)の指摘もある。

セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフは(1927年に短期帰国しているものの)この当時はフランスに住んでいたため、未確認だが『南京虫』の依頼はフランス在住時のプロコフィエフになされたものと思われる。当然ながら、依頼に対する拒否の連絡も、フランスのプロコフィエフからマヤコフスキーになされたことになる。

マヤコフスキーは翌1930年にピストル自殺する。作曲を断ったプロコフィエフは1953年3月5日、つまりヨシフ・ヴィサリオノヴィチ・ジュガシヴィリ=スターリンと同年同月同日に同じ死因(脳出血)により死去する。

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1929年の『南京虫』リハーサル時に撮影。
左からショスタコーヴィチ、マヤコフスキー、メイエルホリド、そしてロドチェンコ。

2009年4月、20年以上前に根絶された筈の南京虫が「復活」し急速に被害拡大中(しかも携帯電話やPCのキーボード等で発生中)というニュースが報じられた。


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